08Haglund disease
Haglund's disease、Haglund's syndrome、Haglund's deformity、pump bumpと様々な名称がつけられており、海外でも用語の混乱が認められる。1898年にPainterは踵骨後部滑液包炎の原因であった踵骨後上隆起を切除し、その組織学的所見を報告した。1928年にHaglundはAchillodyniaをAchillotendinitis ossificans、bursitis Achillea、小児の踵骨骨端症の3グループに分類した。さらにbursa Achilleaをbursa Achillea infero-posterior、bursa Achillea supero-anteriorの2種類のbursaがあり、superior anterior bursitisはアキレス腱と踵骨後上隆起の間でインピンジメントされて発症し、保存療法に効果がみられない場合には踵骨後上隆起を切除すると報告している。1954年にDickinsonらは、アキレス腱付着部とアキレス腱部滑液包炎が存在する踵の後外側が腫大する状態をpump bumpとし、ハイヒール着用との関連性を報告した。1982年にPavlovらが、アキレス腱踵骨付着部付近での軟部組織の疼痛・腫脹が特徴的な後踵部痛をきたす疾患に対してHaglund's syndromeという名称を用いた。1984年にVegaらが踵骨後外側部の明らかな突出を伴うアキレス腱の軽度腫脹に対してHaglund's deformityという名称を用いた。Haglund's diseaseという名称は、osteochondrosis of the accessory navicular boneに対して用いられていた。1998年にSellaらはHaglund's disease、syndrome、deformityのそれぞれの定義を明確にするよう提唱したが、一般に受け入れられず、現状では海外においてもHaglund's diseaseは混乱をみる。ただし、Foot and Ankle SurgeryやFoot and Ankle DisordersではHaglund's deformityのみ記載されている。またヨーロッパの足の外科学会用語委員会ではRetrocalcaneal bursitis、Superficial calcaneal bursitis、Insertional Achilles tendinopathyをアキレス腱付着部における障害に対する用語として用い、Haglund's disease、Haglund's syndrome、Haglund's deformity、pump bumpなどの名称は今後用いないように推奨している。